貴方が最後 私に与えたのは

 

孤独と絶望だけ。

 

 

 

 

 

              +・いってらっしゃいは言えたのに お帰りなさいは言えない・+

 

 

 

 

 

平穏で 平和に生活していたのに

その幸せを 兄さんに打ち砕かれた。

 

 

「女性、子供以外のエクソシストは 全員×××に行ってもらう。」

 

 

講堂に呼び出されたと思ったら 兄さんは静かにそう言った。

女・子供以外って・・・つまりは男性だけ?

 

 

「命を落とす可能性の方が高い。――――――その点 覚悟しておいて。」

 

 

淡々と言葉を発する。

この人は 誰?

本当に コムイ兄さん?

 

 

「×××には 明日出てもらう。では。」

 

 

何で・・・どうして・・・

 

 

「・・・・神田(カンダ)・・・・っ。」

 

 

隣を見てそう言った私の顔は

きっと今にも 泣き出しそうな顔だったと思う。

 

 

――――――――。」

 

 

そんな私を見て

貴方は朧げに微笑んだの。

 

 

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、どういうことだよ?!オレには行くなって!!」

 

 

コムイに急に呼び出されたと思ったら 何だと思う?

 

 

『ラビ。君は×××に行かなくていいから。』

 

 

アレンとユウは行って?オレには行くな?

オレだってエクソシストなんさ。

見くびんなよ。

 

 

「ブックマンの後をつぐんだから。今死んでもらっちゃ困る。」

 

 

 

ダンッ

 

 

 

かあっ、と頭に血がのぼり コムイの机を思いっきり叩いた。

 

 

「ふざけんなよ コムイ。何だよ、それ。オレがジジイの後継ぎじゃなかったら

 行かせてるってことだろ?!アレンやユウは平気で行かせて?死んでも困んねぇって言うのかよ!!」

 

 

 

カシャン・・・

 

 

 

後方 ドアの所で何かが落ちる音。

ハッ、と我に帰る。

ゆっくりと振り向いた視線の先には

 

 

「・・・・リナリー・・・・っ。」

 

 

落としたファイルに構うことなく リナリーはふらついた足取りで前へ進む。

 

 

「何それ・・・ラビは行かないの・・・?アレンくんと神田(カンダ)は行くのに・・・?

 どうして私は行っちゃ駄目なの・・・?私だってエクソシストだよ・・・?」

 

 

ぐらっ、と傾いたリナリーの体を オレはすっ、と支える。

支えた腕から リナリーの肩の震えが伝わってくる。

こんなになってまで まだ悩んで・・・っ!

 

 

「リナリー 少し落ち着けって・・・!」

「何で私は行っちゃ駄目なの・・・?ただでさえ少ないエクソシストなのに・・・

 死ぬ確率の方が高いなんて・・・そんなの急に可笑しいじゃない・・・!!」

 

 

ふぅ、と息をつき コムイは視線を上げる。

いつもと違って ずっとずっと冴え切った目。

 

 

「リナリーを行かせないのは リナリーが女の子だからだよ。」

「今更・・・!」

 

 

ギリ、とリナリーは歯軋りする。

オレはまだ腕をとれなかった。

全然足に力が入っていない。

 

 

「今更になって 男女差別・・・?!今まで普通に女の人だって行かせてたのに・・・

 今回だけ女差別・・・?!兄さん 一体何考えて・・・!!」

「僕の命令じゃない。大元帥の命令だ。」

――――――――っ!!」

 

 

下唇を噛んで リナリーは黙る。

 

 

「リナリー・・・っ。」

「大元帥の命令は絶対だよ リナリー。」

 

 

 

パタン・・・

 

 

 

コムイは静かにドアを閉め 部屋を出た。

その空間に残ったのは

静寂と放心状態のリナリーを ただただ傍観するしか出来なかったオレと

 

 

「大元帥の命なら・・・仕方ないわね・・・。」

―――――――っ。」

「ありがとう、ラビ。もう・・・大丈夫だから。・・・ありがとう。」

 

 

すっ、とオレの腕を解くと 未だふらつく足でリナリーは部屋を出た。

 

 

「・・・・くっそ・・・・!!何で・・・・っ!!」

 

 

泣きたくもないのに 涙が出た。

静寂に

締め付けられる。

 

 

――――――何で・・・・・っ!!」

 

 

オレは

無力だ。

 

 

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

 

 

バルコニーで夜風にあたりながら 朧月を眺める。

第二者の足音が耳に入ってきた。

 

 

「此処に居たのか。探したぜ?」

――――――神田(カンダ)・・・・っ。」

「あー・・・もう。お前 すぐ泣くのな。」

 

 

もしかしたら この顔もこの声にも 

二度と触れられないかも知れない。

そう考えると リナリーは自然と顔を伏せた。

 

 

「・・・・おい。」

「・・・・・・。」

 

 

神田(カンダ)の呼びかけに

リナリーは答えない。

 

 

「・・・・・リナリー。」

「・・・・・・・・・。」

 

 

普段の彼女であれば 名前を呼ばれると嬉しそうに振り向くのだが

今の彼女にとって それは実に残酷な行為だった。

 

 

目が合えば それで終わる気がする。

何もかもが 無になりそうで。

ただその恐怖感が リナリーを苦しめた。

 

 

「おい、リナリー。こっち見ろよ。」

 

 

――――――お願いだから 私の名前を呼ばないで。

 

 

――――っリナリー!」

 

 

そんな彼女に耐えられなくなったのか 神田(カンダ)はリナリーの細い腕を

がしっ、と掴んだ。

 

 

―――――ったく・・・。何 意地張ってんだよ。」

――――――――っ。」

「お前 オレが死ぬとでも思ってんのか?」

「・・・・だって・・・・!」

 

 

未だに彼女は神田(カンダ)と顔を合わせおうとしない。

下を向き 泣きながら一言発する。

 

 

「・・・嫌よ・・・っ!」

―――――――――っ。」

「何で・・・死ぬってまで言われて・・・行くの・・・?!私は・・・何も出来ないの・・・!」

―――――――――っ。」

「あなたが傷ついて戦っている間 私は教団で待つしか出来ないのよ・・・?!

 私にだって力はあるのに・・・っ!今になって 男女別視するなら あんな拷問じみた

 適合検査なんてしなきゃよかったのに・・・!!」

―――――――――っ!」

 

 

幼い頃の記憶がまだ身体に染み付いている。

こんな処来なきゃ良かった。

そう後悔しているとき

少女は彼に出会ったのだ。

 

 

「私だって強くなったつもりなのに・・・どうして力を必要とされないの・・・?

 私だって あなたと一緒に戦うことぐらい・・・!」

――――――リナリー。」

 

 

今まで黙って話を聞いていた神田(カンダ)は ようやく口を開く。

 

 

すっ、と優しくリナリーの手をとると 右手の薬指に金色のそれを通す。

 

 

教団(ここ)に来る時 貰ったオレのお守りだ。」

――――――っ。」

「左手は少し待ってろ。帰ってきてから ちゃんとはめてやる。」

―――――神田(カンダ)・・・っ!」

 

 

バッ、と顔を上げ 潤んだ視界に神田(カンダ)が映る。

 

 

「やっと顔上げたな。」

「だって・・・これ・・・っ!」

 

 

フッ、と微かに笑い

 

 

「何も心配することない。」

 

 

神田(カンダ)は言う。

 

 

「必ず帰ってくるから。」

 

 

涙を流し リナリーは神田(カンダ)の胸に顔を埋める。

頭に手を回し 神田(カンダ)は沈黙を流す。

 

 

――――好きだ。リナリー。ずっと・・・ずっと・・・。」

「うん―――――神田(カンダ)・・・いってらっしゃい・・・。」

 

 

貴方が最後に見せた微笑みは

月明かりで 少しぼやけて見えた。

 

 

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

 

 

『×××への任務

  負傷者  **人

  死者    *人 』

 

 

 

 

 

「ちょ、何言ってんの アレン・・・?いくら何でも その冗談キツイぜ・・・?」

「そんな冗談 死んだって言いませんよ・・・っ!!」

 

 

任務報告を聞いた。

アレンの口から出てきた言葉は 科学班全員に衝撃を与えた。

 

 

 

 

 

 

神田(カンダ)

 

 

 

 

                          死にましたから』

 

 

 

 

 

 

「ちょ、マジで・・・ちょっと待って・・・ユウが・・・え・・・?」

 

 

必死に落ち着こうとするラビの目に 涙が浮かぶ。

 

 

「ハハ・・・どうせまた 頑張り過ぎて空回りしちまったんだろ。

・・・昔っからユウは危なっかしかったからなぁ・・・。」

 

 

 

 

 

 

「・・・・あのバカ・・・・っ!!」

 

 

 

 

 

 

そのままラビは ずっ、とソファーに腰を下ろす。

 

 

「何で・・・ユウが死ななきゃイケナイんだよ・・・・っ?」

 

 

下を向く。

 

 

―――――――何・・・・・で・・・・・っ!!」

 

 

泣いた。

声をあげずに ただ涙を流して。

泣いた。

 

 

一緒に遊んで、泣いて 喧嘩して、強くなった幼馴染の

声も笑顔も 不機嫌な表情も優しさも

何も戻らない。

 

 

 

そして

 

 

 

――――――アレンくん 今 何て言ったの・・・?」

 

 

 

そして アイツは

 

 

 

「・・・っ神田(カンダ)が死んだなんて・・・嘘でしょう・・・?!」

 

 

 

愛しい人の幸せを 自ら奪い去った。

 

 

 

「リナリー・・・僕だって生きてるのが奇跡なんですよ。」

 

 

ゆっくりと 目を伏せ アレンは言う。

 

 

神田(カンダ)はもう・・・戻らないんです・・・!」

―――――っ!嫌いよ・・・そんなこと言うアレンくん何て・・・嫌いよ・・・っ!」

――――――っ。」

「・・・リナリー・・・。」

 

 

すっ、とラビは立ち上がり リナリーに言った。

 

 

「アレンに対して言いすぎだろ・・・・。」

「・・・だって・・・!!死んだなんて嘘・・・!必ず帰ってくるって・・・

 そしたら左手に指輪はめてくれるって・・・神田(カンダ)・・・言ったもの・・・!」

 

 

涙を流しながら 真実を 全身で拒絶する。

そんなリナリーを見て さらにラビも涙した。

 

 

しかしまた 冷酷な言ノ葉。

 

 

「リナリー。死んだ人間は 二度と戻らないよ。」

「室長 言い過ぎっスよ・・・!!」

 

 

グンッ

 

 

「テメェ・・・コムイ!この間からよくまぁ そんなに淡々と言えるよなぁ?!

 ユウだけじゃねぇ・・・死んだ人間 何だと思ってんだ!!」

 

 

ガシャーンッ

 

 

ラビが怒鳴った直後 リナリーはコムイの後方目掛けてファイルを投げ付けた。

 

 

「そういうこと言うのは コムイ兄さんじゃない・・・。

 私の知ってる コムイ兄さんはそんなんじゃなかった・・・っ!!」

 

 

震える声で怒鳴ると リナリーはだっ、と部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

 

向かった先は 以前神田(カンダ)と別れを告げたバルコニー。

この間よりの月明かりが 明るくて 痛い。

 

 

「・・・・神田(カンダ)・・・・?」

 

 

名前を呼ぶ。

私の愛しい人。

 

 

「・・・・神田(カンダ)・・・っ!」

 

 

でも返事が返ってくることはなく。

私が あなたに答えなかったから――――

 

 

「・・・ごめんなさい・・・神田(カンダ)・・・っ・・・(カン)・・・()・・・っ!」

 

 

月に雲がかかる。

彼女のそれは 嗚咽に変わり。

 

 

「うそ・・・つき・・・!帰ってくるって・・・言ったじゃない・・・!!」

 

 

 

 

 

「ど・・・し、て・・・っ!」

 

 

 

 

 

泣き崩れた彼女の姿を月明かりが 容赦なく照らす。

横に一筋の人影が伸びてくる。

 

 

――――・・・ラビ・・・。」

――――大丈夫だよ リナリー・・・。」

 

 

未だ涙を堪えた表情で ラビはゆっくりリナリーに言う。

 

 

「ユウは・・・死んだってリナリーのことだけを見てるさ。ずっと・・・。」

「そんなの・・・!会えないじゃない・・・!!」

 

 

リナリーはラビの胸に泣き崩れた。

彼もそれに応えるように 静かに胸を貸す。

 

 

「でも前・・・ユウ言ってたさ。“遠恋になったらどうすんの?”って聞いたら

 アイツ 即答した。“アイツ以外 好きになると思うか?”って。

・・・だから・・・実感なくてもさ、ユウはリナリーのことだけ見てるよ。必ず。」

――――――――っ。」

「だから―――――

 

 

 

 

 

 

「今はまだ アイツも向こうに着いてないと思うからさ。ユウにこんな顔 見せたくないだろ・・・?

 だから リナリー・・・。」

―――――っ。」

「今は・・・泣いていいよ。思いっきり・・・泣いても・・・っ。」

―――――――っ・・・ひっ・・・う、あ・・・・あぁ・・・(カン)・・・・()っ!!」

 

 

リナリーの泣き声を受けて ラビもまた 一滴涙をこぼすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――静かに照らすだけの月なんて要らない。

     

                                照らさないで 私を。

 

               どうか 私を連れて行って。

 

                                貴方の居る空虚な世界に 

  

               どうか 私を 堕としてください

 

 

 

 

 

 

 

☆あとがき★

死ネタでごめんなさい↓↓初めて書きました。

《長文で書く10のお題》から一つ消化。

 

神田が死んだらラビは思いっきりなきそうだなぁ、と。

文章めちゃくちゃでごめんなさい。。

もう悲恋は書きたくない・・・涙